日本建築・日本の街を考えていきます。(岩井慎悟)


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酒倉の造り

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伏見の酒倉の造りは、以前に掲載した記事のように、他の蔵の造りのような海鼠壁(なまこかべ)を使わず、外壁は赤黒く塗られた縦板を高く張り上げ、壁の上部(破風と軒下のわずかな部分)は白漆喰が細く塗られています。屋根は桟瓦葺きで、全体的に見ると実用に徹底した簡素な造りになっています。
これが一見地味なようですが、黒白の階調が明快なので、意外に派手さを感じる意匠なのです。
京都の『簡素の美』というか京都の美学を表している一面だと思います。

町家や日本の古い民家でも、日本の建築と言えば、柱や梁などの構造材が露出している真壁つくりという工法になっているものが多いのですが、蔵造りというのは、元来、耐火性という目的があるので外壁はそういった構造材が露出していない造りになっていることが多く、この伏見の酒倉も外部に構造材が露出していない構造となっています。
内部は、逆に真壁の漆喰塗で、柱や梁・また小屋組まで全部露出しています。

伏見の酒倉は、他の蔵とは違い、耐火性はそんなに必要とされなかった為、海鼠壁を使わず板貼りにしていると説明しましたが、ではなぜ、構造材を露出していないかと思う方もいるかもしれませんね。
それはベースとなった土蔵の蔵造りのもう一つの特徴『断熱性』というところに伏見の酒倉は着目し、酒倉に土蔵造りを取り入れ、必要のないところは簡素化したんじゃないかと考えられます。
酒造りは、新米の入荷する11月ごろからで、要するに気温が高くない冬のものです。
断熱性がよければ、酒造りをする期間を前後に延長することが出来る。
そんなことが考えられたんじゃないでしょうか。

四季造と呼ばれるように今の酒造は更に酒造期間を延長できるように、現代的な酒倉へと変わり、今はもう現役でない酒倉も多く、空家やただの倉庫となってしまっている現状は、前回書いたように伏見の酒倉や街並みがマンションへと変わっていくのを更に後押ししています。

本来の目的とは違いますが、酒倉を飲食店に改造しているお店も伏見にはあり、繁盛しているようです。
全ての人が利益のみの考えを捨て、また刹那的な快楽だけの考えを捨てることが出来るのなら、まだまだ現役で活躍できる酒倉もあるのかもしれませんが、それは難しく、そういった『コンバージョン』と呼ばれる建物の用途を変えることで建物にもう一度活気と役割を与える方法も、時には必要なのかもしれませんね。
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by 100nenya | 2005-04-20 01:05 | 日本の家を考える